本格的な登山の用途から街着に、そしてファッション界を牽引するまでに進化を遂げてきたモンクレールは、1950年代からの歴史の中で、技術と審美性をダウンジャケットの世界で紡いできました。
その歴史は長く、創業は1952年に遡ります。もともとモンクレールは、テントやシェラフ、ウェアといった登山家のための装備を手掛ける企業でした。
ある時、キルティングの寝袋からインスピレーションを受け、工場で働く労働者が寒さから身を守るための防寒ジャケットを作成しました。これが今日のダウンウェアの原型といえるものです。
モンクレールは、この防寒ジャケットをさらに発展させるため、フランス人として初めてヒマラヤ登頂に成功した登山家のリオネル・テレイをテクニカルアドバイザーに迎えました。
プロフェッショナルのアドバイスをもとに、軽量で保温力に優れ、機能的なダウンウェアが完成。この瞬間、工場で寒さから身を守るために着込むウェアから、登山用のウェアへと進化したのです。
この開発には、様々な意見が出されましたが、登山用のウェアということもあり、保温性や着用感など、登山に適した機能が第一に考えられてきました。
多くの登山家に支持されるようになったモンクレールは、1954年のイタリアのカラコルム(世界2番目の高さ)登頂隊や、1955年のフランスのマカルー登頂隊、1964年のアメリカのアラスカ遠征隊に登山ウェアを提供するなど、短期間の間に世界の登山家達から絶大な支持を得るようになりました。
多くの登山家から支持された理由は、防寒性だけでなく、その機能性で、ボタンやドローストリングなど細部の使いやすさをより高めるべく改良を加えてきたことがポイントでした。
1968年には、モンクレールの地元であるフランス南東部のグルノーブルで、第10回冬季オリンピック大会が開催されました。この大会で、モンクレールはフランスのナショナルスキーチームの公式スポンサーに認定されました。
この大会では、スリムなフィット感と機動性とを両立させたウェアの「サッコピューマ」などがフランス代表選手に愛用され、高い評価を受けました。
この時使用されたトリコロールカラーのダウンウェアは、ダウンウェアながらも洗練されており、モンクレールの名を世に知らしめるきっかけになりました。
また、このオリンピックからフランスの国鳥である「オンドリ」がモンクレールのシンボルマークとなり、現在の商標として使われるようになったのです。
登山家やスキーヤーといったプロフェッショナルのためのダウンジャケットブランドとして確固たる地位を確立したモンクレールですが、1980年代には、その暖かさと美しい配色がパリのセレクトショップやファッション誌などで受け入れられ、ファッションアイテムとして扱われるようになりました。
モンクレールのダウンジャケットが、登山やスポーツのためのウェアとしてではなく、ファッションアイテムとして脚光を浴び始めたのもこの時代からです。
2003年にモンクレールの会長に就任したレモ・ルッフィーニは、あらゆる場面・場所で最適なダウンを幅広く展開するダウンジャケットというコンセプトを掲げました。このときに、高い機能と高いデザイン性を両立させながら高めていくという、今日まで続くブランド路線が確立されました。
また、レディースモデルにも力を入れはじめたり、ダウンジャケットのような冬用のウェアだけでなく、春夏物やシューズなど、様々なアイテムを充実させ、全身でのコーディネイトが完成できるようになったりしたのもこの頃からです。
現在でも強い人気を誇るダウンジャケットの「マヤ」が2009年に誕生しました。ダウンジャケットでありながら、スマートなシルエットと高級感、更に圧倒的な温かさを誇るということもあり、一躍人気モデルとなりました。
使われている繊細な光沢のあるナイロン生地は通気性・撥水生に優れ、スマートな見た目も相まって、モンクレールのスタンダードとして現在でも人気を誇っています。
ファッションブランドとして舵を切ったモンクレールは、著名なデザイナーとのコラボレーションを行い、デザインの追求を続けます。
2003年にはエミリオ・プッチと。2004年にはジュンヤワタナベ・コムデギャルソンなど、錚々たるデザイナーとコラボレーションを行ってきました。
モンクレールで生まれたアイテムは、その範疇を飛び出すまで成長していきました。その受け皿として、2006年にはクリエイティブかつ斬新な最上級ラインとなる「ガム・ルーシュ」を発表しました。
それに続くように、2009年にはメンズコレクション「ガム・ブルー」。2010年にはクラシカルなデザインに高い機能性を落とし込んだ「モンクレールグルノーブル」など、現在では複数のラインを持つブランドにまで拡大しました。
モンクレールは、クラシックでありながら、最高のダウン製品を提供し続けるだけでなく、流行を取り入れたファッション性の高い製品の創作に力を入れ続けてきました。
そして今では、モンクレールはファッションブランドのトレンドを牽引するまでになり、現在に至っているのです。
創業は1952年。フランス・グルノーブル外の村でモンクレールは創業されました。ブランド名は、村の名前のモネスティエ・ドウ・クレルモンに由来しています。設立当初はテントやシェラフ、ウェアといった登山家のための装備を手掛けるメーカーでした。
初めてダウンジャケットがつくられたのは、1954年に世界的な登山家のリオネル・テレイが、モンクレールの創始者のひとりに登山用装備の開発を依頼したのが始まりです。このダウンジャケットは、世界で二番目の高さを誇るカラコルムに挑むイタリア登頂隊に採用されたことから、カラコルムと名付けられました。
この頃の登山用ウェアはまだウール製のものが主流でしたが、フランスの登頂隊がモンクレールのダウンジャケットを装備し、エベレストの東方約22 kmにあるヒマラヤ山脈にある8,000mを超える高峰マカルー登頂を成功させました。
モンクレールのウェアがフランス南東部のグルノーブルで開催された、第10回冬季オリンピックにフランスのスキーチームの公式ウェアとして採用されました。これにより、世界中の人がモンクレールのウェアを目にすることになりました。
登山家やスキーヤーなど、プロ御用達のウェアとして認知されていたモンクレールですが、80年代には、ファッション誌が高機能でファッショナブルなウェアという切り口でモンクレールのダウンジャケットを取り扱うようになりました。この頃から、街で着用できるファッションアイテムとして徐々に認知が広がります。
一般層への認知度が高まってきたのは、著名なファッションブランドとのコラボレーションを繰り返し行ってきたことも一因です。2003年にエミリオ・プッチとのコラボレーションに取り組みます。以降、2004年ジュンヤワタナベ・コムデギャルソン、2005年バレンシアガ、2006年フェンディと続いています。
著名なファッションブランドとのコラボレーションから得られた経験や技術は、モンクレールを大きく成長させました。2006年にはクリエイティブかつ斬新な最上級ラインとなる「ガム・ルーシュ」を発表。登山用のダウンから、クチュールの技術を取り入れたスタイルに進化し、あらゆるシーンに通用するダウンの概念が確立されました。
2009年にプレッピースタイルを得意とするトム・ブラウンをクリエイティブ・ディレクタ一に迎え、テイラードウェアと融合したメンズコレクション「ガム・ブルー」を開始しました。翌年の2010年にはクラシカルなデザインに高い機能性を落とし込み、都市生活にもフィットする「モンクレールグルノーブル」コレクションを発表。既存ブランドの枠に収まらず、複数のラインを展開していきます。
2013年にはアイウェアがリリースされることに。「モンクレールルネット」と名付けられ、モンクレールのさらなる広がりを世界に知らしめました。
2016年には「モンクレールO」が始動。このラインは、ヴァージルアブローとコラボレートしし、北洋のフィッシャーマンの服装とテクノロジーが融合したデザインが特徴です。
2017年にはグレッグ・ローレンとコラボレーションを行い、デニムの断片や古着の生地をダウンジャケットに組み込むなど、独自のアプローチを展開した「グレッグ・ローレン&モンクレール」が発表されました。
2018年には、世界で活躍するクリエイターとコラボレーションを行い、「モンクレールジーニアス」が始動しています。モンクレールが持つ技術や機能性、ダウン素材を軸に、様々なクリエイターがコレクションを展開しています。